「生野発!市民による多文化共生のまちづくりにむけて」をテーマにしたセミナーが、2月17日(日)に、大阪市立御幸森小学校で開催された。主催は生野区NPO連絡会とIKUNO・多文化ふらっと準備会。大阪市生野区は区民の5人に1人が在日コリアンをはじめとする外国籍住民で、現在60カ国の人々が暮らしている日本有数の多国籍・多文化のまち。
この日、会場には定員を大幅に超える約80名の多彩な人々が集まり、議論を繰り広げた。
外国にルーツを持つ人々が生きづらさを持つことなく、安心して暮らしながら、力を発揮するためにはどうすればよいか。地域の人々が互いの言葉、文化、習慣、考え方のちがいを尊重しながらともに生きていくにはどうすればいいか。多文化共生の創造的エネルギーを、これからの生野区のまちづくりにつなげるにはどうすればいいか。こうしたことを議論していく「テーブル」を市民主導でつくっていこう、と開催された。
生野区NPO連絡会の隅田耕司さんが主催者を代表して開会あいさつを行った後、生野区で暮らすニューカマー外国人の若者たちが制作したオープニング映像が上映された。民族学級(国際クラブ)に参加するコリアにルーツを持つ中学生たちが生野コリアタウンを民族衣装を着てパレードする姿、ニューカマー外国人の若者と地域の高齢者との交流場面、地域の人々と一緒に防災・防犯行事に参加する100人を超える留学生たちの姿、ヘイトスピーチや差別に抗議するNPOのスタッフ、生野区役所による多文化交流イベント「TATAMI TALK」などが次々と映し出された。生野区の多文化共生に向けた取り組みの積み重ねや「新しい波」について食い入るように見つめる参加者の真剣な姿が印象的だった。
続いてリレートークが行われた。在日コリアン、ニューカマー外国人、若者、保護者、地域、企業、行政、有識者の立場から次々と興味深い話題提供がなされた。現在近畿大学で学んでいる、地元出身の渡邉夕貴さん。昨夏にタイのスラムなどへのスタディツアーに参加したことをきっかけに、知人や友人たちの何気ない会話の中に出てくる外国人への偏見や差別発言に対して、いまは「それは偏見やろ?」と言える自分がいること。中学校の恩師が語っていた「この世界には見ようとしなければ見えないものがあること。聞こうとしなければ聞こえないものがある」という言葉の意味が最近分かったこと、などを熱っぽく語った。
生野区でカバンの製造・販売をしている株式会社丸富商会の代表取締役の奥中利直さん。自社工場があるバングラデシュからカバン技術を学びに来日したバングラデシュ人たちが安心して暮らせるためには、地域の人付き合いとさまざまな生活環境の整備が不可欠だと語った。山口照美・生野区長は、公立小学校の民間校長として10カ国のルーツをもつ子ども・保護者と関わってきた経験を紹介した。そのうえで「自分の原点は人を人として当たり前に知り、当たり前につながりたいということ」と述べ、生野区を「すべての人に居場所と持ち場となる」まちにしていきたいと抱負を力強く語った。
その後、高齢者、子育て・教育、就労、居場所の6グループに分かれて、活発な討論が行われた。最後に主催団体であるIKUNO・多文化ふらっと準備会の宋悟さん(NPO法人クロスベイス)が閉会あいさつを行った。今後の方向性として、①市民による生野区の多文化共生のまちづくりに向けて誰もが参加し、情報を共有し、ともに学べる常設的な論議「テーブル」をつくること、②その場も活用して、一人ひとりが自立的にプロジェクトを立ち上げていくことが大切であること、➂行政とも緊張感を持ちながらも積極的に協働していくこと、を全体で共有した。この日、大阪市生野区の多文化共生のまちづくりに向けて、また「新しい波」がつくりだされた。今後の展開が楽しみだ。