大阪市生野区における多文化共生のまちづくりを考えるセミナー「多文化共生のまちづくりに必要な視点とは」が、生野区役所の職員をはじめ市民ら48名が参加する中、11月18日(月)に生野区民センターで開催されました。主催は今年6月に発足した市民主導のプラットホーム「IKUNO・多文化ふらっと」。
セミナーは、外国籍住民が5人に1人以上を占め、60カ国以上の外国人が地域でともに暮らす生野区の多文化共生のまちづくりに向けた視点を深掘りする趣旨のもと開催されました。「そもそも多文化共生は必要なのか」「行政と市民との協働のあり方は」「多文化共生の生野区モデルとは具体的どういうことか」などなど。
セミナーの最初に主催者あいさつに立った世話人の四宮政利さん(生野区民生委員児童委員委員長)は、「地域の外国人の人たちと地域がともに生きていくためには、今後は民生委員の方々と多文化ふらっととも連携・協力しながら活動していくことが必要だ」と強調しました。「ゲストスピーカーとして大阪府豊中市の多文化共生などの施策に長く関わってきた前豊中副市長の田中逸郎さんと、外国にルーツを持つ子どもの教育コーディネーターとして豊富な実践経験があるNPO法人コリアNGOセンター事務局長の金光敏さんをお招きしました。全体コーディネーターは、前(公財)とよなか国際交流協会常務理事の金相文さん。長年にわたり具体的な実践や施策の策定に関わってきた3人の対話は、リアルな現実と理想を交差させながらのスリリングな対話となりました。
多文化共生のまちづくりの必要について、金光敏さんは3年前の米国国務省のプログラム招請で訪問したシャーロットというニューヨークに次ぐ全米第二の金融都市の事例を引きながら以下のように語りました。「シャーロットは米国で最も難民を受け入れているまち。共和党の保守的な人さえも難民は都市の活性化には欠かせない存在という。まちの発展を長い目で観たとき意識的に多様なエネルギーを都市に注入しておかないと息絶えてしまう、と。」「問題を潜在化させるのではなくて、顕在化させることで課題を抽出して課題を解決したほうが健全だ。排除することに力かけるのではなく、課題解決に力を使うことの方が健全だ」。また階層の固定化が進む日本社会にあって、法律や制度へのアクセスが平等にあるのか、と問いかけた。
田中逸郎さんは、長い行政経験から多文化共生の原点は「豊中市40万人の意見を一致させることが合意ではなく、40万人の市民がそれぞれ違うことをお互いが承認し合うことが合意だ」というところから出発することの大切さを強調しました。多文化共生は「永久運動」のようなものだと。みんな同じとみんな違うことを同時にやることが共生を考えていくうえで一番大事だと、語りました。最後に田中さんは、区民は「未来からの預かりもの」を未来に届ける役割があること、プラスの価値を創造するのは行政の力だけではできないこと、に言及したうえで、生野区の多文化共生のまちづくりの取り組みが、民がつくる「公共」のトップランナーになることを目指してほしいとエールを送りました。
IKUNO/多文化ふらっとでは、今回のセミナーで学んだ視点や観点を今後の学校跡地を活用したIKUNO多文化共生センターの設立につなげられるよう、引き続き活動を展開していきます。