コレクティブインパクト。それは様々な場所で活躍するセクターや関係者が互いに連携しあい、共同して複雑化する社会課題に取組むための枠組みです。このコラムではIKUNO・多文化ふらっとに関わるそのような多様な人々の「いくのパーク」への想いを届けます。
大阪経済法科大学客員教授/元東淀川区長
金谷一郎(IKUNO・多文化ふらっと理事)
■IKUNOを考える
私は、生野生まれの生野育ちで今も生野に住んでいます。一度も引越した経験がありません。住んでいるのは東中川小学校区で、父親も私も息子も東中川小学校を卒業しました。孫も今、同校6年生に通学しており、来年(2023年)3月に卒業します。そうなれば、4代にわたり東中川小学校卒業となります。中学校は東生野中学校、高校は生野高校と生野にご縁があり、生野が大好きです。
しかし、ある機会に、生野区のある中学生たちに聞くと「生野と言いたくない」「生野から出ていきたい」「生野と分かるから中学校の名前を言いたくない」と言われました。なぜ???彼ら彼女たちは、本当の生野を知らないからそう言っているのではないか!学校で、家庭で、地域で、友人・知人と生野について話合わないのではないか!など生野生まれの生野育ちの私には理解できないことが多くあります。
生野は良いと言う人たちが私の周りには多く存在します。一方で生野への忌避意識のある方も多く存在します。その忌避意識はどこから生まれるのか?犯罪をゼロにすることは困難ですが、他の区・市に比較して「犯罪が多い」「治安が悪い」などは全て事実とは異なっていて偏見です。真実を知らないから偏見が生まれます。これは部落差別、外国人差別、女性差別、障がい者差別、LGBTへの差別・ヘイトなど全てに共通することと考えます。学校教育・社会教育に課題がまだまだ存在します。
次に生野への通勤者の意識はどうでしょうか? 今回の共同事業者である株式会社RETOWNの松本社長は「生野は良い所ですね」と言ってくれました。ものづくりに関わる中小企業の従業員さんに生野に関してお聞きする機会があった時には「生野は良いまちです」と言ってもらいました。一方で生野から転勤で出ていきたいと言っている従業員・職員が多い組織・団体もあると聞きます。この方々も本当の生野を知らないと思います。
「生野は人情味が厚い」「親切なまち」と言う居住者、従業員、企業、組織・団体も多く存在します。 私は、淀川区長・東淀川区長を経験しましたが、決してこの両区に負けない地域と考えます。
この多様性が生野のメリットでもありデメリットであると考えます。
■「多文化共生」を考える
「多文化共生」と言うと、行政内部はもちろん、外国人差別の問題と捉える方々が多く存在します。 多文化ですから海外の文化・価値観だけでなく、国内にも多くの文化・価値観が存在する多様性の時代です。また、障がい者・LGBTなどへのマイノリティへの差別解消も多文化共生と私は考えます。この延長線上には、「あらゆる人たちが自分らしく生き生きと暮らし続けられる地域」を目指す「地域共生社会」に通じるものと考えています。単に差別を解消するだけでなく、多様な文化・価値観を持つ人たちが混ざり合い、刺激しあい、共感・共鳴しあう地域でありたいと願っています。私の小学校時代にも、多くの在日の同級生や障がい持つ同級生がいて仲良くしてもらいましたし、多くのことを学ばせてもらった大事な友人です。私の多文化共生の原体験です。
生野にはその下地や可能性があると考えます。
この「いくのコーライブズパーク」がその実験の場・実践の場となり、他の地域への広がっていくことを願って止みません。グローバルタウンを目指します。子どもたち全員が、生まれ・育ったIKUNOを自慢できるまちにしたいです。
■最後に
私たちだけの力で、「いくのコーライブズパーク」が成功し、発展し、グローバルタウンが実現できるわけではありません。地元の御幸森地域はもとより生野区、大阪市・府、全国の皆様のご協力なしには実現できないと考えます。よろしくお願い申し上げます。